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2007年7月 9日 (月)

キューマ危機一髪

482pxfumio_kyuma_in_pentagonアメリカによる原爆投下を容認したともとらえられる発言で物議をかもし、袋だたきに遭い、結局ケツをまくった久間大臣。俵孝太郎氏が言うように発言自体は、終戦の詔勅の解釈の範囲内のもので、不穏当というわけでもないし(本島元長崎市長も昭和天皇の発言を引用し同様の見解をしている)、甘かったとすれば出典なり典拠なりを示さなかったことにある、という指摘には同感である。

むしろ不穏当だったのは、発言後の久間前大臣の態度であり、初期対応を誤ったために批判が拡大したのだろう。久間氏自身は、批判がなぜ広がったのかの自覚はないようだが、「選挙に影響が出ないように」という自民党内で誰も文句のつけられない、とってつけた理由をもって辞任してしまった。安倍首相が辞任する必要はない、と庇った直後のことで、安倍首相に恥をかかせるためにやったのは明らかである。しかし彼には辞めなければならなかった理由がある。参院選後のポスト安倍を睨んでの動きもあるが、防衛企業の内紛が自身に飛び火する可能性が日に日に高まっているためだ。

ポスト安倍に関して言えば、フリーハンドを得るために閣外へ出たと考えられる。擁立する相手は、額賀前防衛庁長官。昨年の総裁選では、出馬を押さえ込み、温存するとともに、自身の力をも増大させるという、策師ぶりを披露。最近では古賀・麻生・平沼ら志士の会にも参加したり、政局を睨んだ動きが目立つ。額賀氏のようなインケツが総理大臣になるということは悪夢以外の何者でもないのだが、久間氏がそう感じていないところが問題だ。この動きに対抗するかのように、大村"うなぎ犬"副大臣に代わり、年金パフォーマンスを行っている茂木敏充議員にも注目である。久間氏が最も切望するシナリオは、参議院選挙で安倍首相と青木自民党参議院会長(及び片山参議院幹事長)が刺し違えて共倒れになり、経世会を牛耳ってそこから首相を出すこと、もしくは自身の息のかかった人物をポスト安倍に送り込むことであろう。上手く行くとは思えないが。

実はもっと深刻なのが防衛企業・山田洋行をめぐる内紛であろう。自身が防衛大臣のままだとまともにこの影響をかぶりかねないのでトンズラしたのである。

この内紛は、山田洋行のオーナー山田正志氏と創業メンバーで防衛庁出身の宮崎元伸氏の確執が原因だ。防衛に関して素人だった山田洋行をAランクの納入業者にまで育てたのは、宮崎氏の手腕によるものである。バブル崩壊で保有する不動産が不良債権化し、身売りを画策していた山田氏に反発して、宮崎氏が部下28人を引き連れて、昨年独立した。宮崎氏を始め、28人すべてが防衛庁への納入を担当していた従業員で、この時点で山田洋行にAランク企業の実力が無くなってしまった、といってよい。

内紛が明らかになったのは、次期CX機のエンジンの納入に関して、山田洋行と独立した宮崎氏の日本ミライズが訴訟状態になったからだ。今までのGE製のエンジンの納入は、ずっと山田洋行の宮崎氏の一派が行ってきたもので、今回のは総額で1000億円近くにもなる。防衛庁での納入実績から山田洋行側は今回も自分たちが指名されるとばかり思っていたが、製造元のGEが日本ミライズを指名し、それを防衛省に通告してきた。これを阻止すべく、山田洋行が営業妨害で日本ミライズを訴えた。このままだと山田洋行は廃業の憂き目にあうからだ。

GEからすれば、今までつきあってきた宮崎氏が山田洋行から独立してしまったのだから、現場の判断で山田洋行を見限るのは当然でもある。しかし防衛省の入札ルールを知っているはずのGEが敢えて問題が大きくなるような対応に出たのには疑問がある。今回の規模の入札は、Aランク業者にのみ資格が与えられ、実績のない日本ミライズが参加できるはずもないのである。

しかし防衛省の反応は違った。イージス艦の機密情報漏洩問題、F22戦闘機の配備をアメリカ側が渋っている問題、などを考えると今回の納入をできるかぎりスムーズに行いたいために、GEの判断を追認したのだ。これに異をとなえているのが、久間前大臣である。山田洋行が頼りにしているのは、秋山直紀日米平和文化交流協会専務理事である。宮崎氏も同協会の役員であるが、秋山氏は久間前大臣と防衛利権を分け合う仲でもある。こうなると次のような構図が浮かび上がる。

GE(ペンタゴン)+日本ミライズ+防衛省(守屋天皇)
VS
山田洋行+秋山直紀(久間章生)

アメリカのペンタゴンやチェイニー副大統領が久間前大臣を嫌っていることは周知のことであるが、その原因の一つに秋山氏のブローカーぶりが挙げられる。前大臣の訪米に同行し、商談などを行っていた姿が目に余ったのだ。今回の内紛自体、GEやアメリカの防衛関係者が、秋山氏排除のために、宮崎氏を唆した可能性がある。

そして内紛が訴訟まで発展した今、防衛利権を巡る暗部が、裁判を通じて暴露される気配だ。検察もそれに舌なめずりしている。秋山氏ごと久間前大臣が排除される可能性があるのだ。それを避けるために、防衛大臣を辞任し、罪一等減じてもらおうとしたのではないか。防衛利権を失うが、政治生命を失わなければ再起できる、そう踏んだのではないか。しかしそうは問屋が卸さないかもしれない。原爆発言の翌日に行われたマニフェスト討論会で、整備新幹線が槍玉に挙がってしまった。この一つである長崎新幹線は、久間前大臣が命をかけてやろうとしている我田引水新幹線である。政局政治家久間章生の今後の立ち回りに注目だ。

なお後任の小池大臣。最悪の選択と言っておく。前回の参議院選挙では、イラク特措法の混乱から多くの自衛隊票が逃げたのだが、小池大臣は環境安保などととんちんかんなことを主張して、現場からの評判がすこぶる悪い。ひげの隊長を擁立した効果も吹き飛ぶであろう。そして彼女は久間前大臣以上のタカ派でもある。アメリカの防衛関係者からしても、よりによって、と言う感じだろう。 

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